市長演述 平成20年第1回(平成20年3月議会)

市長演述 平成20年第1回(平成20年3月議会)

 平成20年第1回花巻市議会定例会  市長演述要旨

はじめに

 本日、平成20年第1回花巻市議会定例会が開会されるに当たり、平成20年度の市政運営について、私の所信の一端を申し上げます。市議会並びに市民の皆様のご理解とご協力をお願い申し上げます。

市政の方向性の確認

  先ずはじめに市政の方向性について、改めて確認をいたしたいと思います。
  2年前、私は市政の舵取りを担うにあたり、2つの観点から今後の方向性を論じさせていただきました。

  第一の点は、人口減少社会の意味するところを真正面から捉え、対応していく必要性であります。即ち、人口減少はわが国の様々な制度の構築根拠を崩すとともに、地方経済の縮小、ひいては税収の減少をもたらす極めて重要な意味を持つ要因であり、安易な楽観論や希望的観測にとらわれることなく、しっかりと見据えていかなければならない、ということでありました。
  現在、この人口減少の状況は地方にとってはさらに拍車がかかり、人口増加とかつての人口構造を前提に築かれてきた、わが国の産業経済や社会保障システムの大きな制度改革が推し進められているのであります。また、全国で財政破綻の危機に直面している自治体が現実にあることを踏まえますと、この状況をしっかりと認識し、引き続き強固な財政基盤の確立に取り組んでいかなければなりません。

  第二の点は、地方分権の意味するところをしっかりと理解しなければならないということであります。即ち、自己責任を伴った自立した自治体を構築していかなければならない、ということでありました。
  右肩上がりの経済が終焉し、国、地方とも膨大な借金を抱えている今日、戦後、連綿と続いてきた行政運営の仕組みを、根本から再構築するため、数次に亘り地方分権が推し進められて来ております。国や県に依存する旧来の行財政運営から脱却し、同時に市民と市との関係においても、ともすれば行政主導、行政依存になりがちであった従来の行政運営から脱却し、自立した市民と自立した行政との協働によるまちづくりへ転換して行かなければならないのです。

(小さな市役所構想の検証から)

  今年度から進めてまいりました小さな市役所推進事業につきましては、コミュニティ会議の皆様には大変なご努力をしていただきました。お蔭さまで市内26箇所全てにおいてコミュニティ会議が設立され、地域自治の確立に向けた熱心な話し合いが行われており、地域の課題解決のための事業計画が立てられ、事業が進められております。
  過日開催されたコミュニティ会議の情報交換会で各地域の発表をお聞きし、地域づくりが少しずつ動き出したと実感しております。そして、間違いなく地域には民力がある、花巻には大きな力があることを確証いたしました。と同時に日本のかつての経済成長に裏打ちされた政治は、民力、助け合いの社会という力を削いでしまったのではないか、ということもまた確証せざるを得ないのであります。
  この様に、これまでの中央集権時代は行政依存という弊害をもたらしたことも事実ではありますが、物的に豊かな社会をつくり上げてきたこともまた事実であります。そして、これからの地方分権時代は物的豊かさに心の豊かさを加え、真に成熟した社会を構築する時代に入ったことを認識しなければならないのです。
  そのためにはまず、行政に対する要望姿勢から自立への市民意識の改革と、行政主導によるサービス提供者からコーディネーターへの市職員の意識改革を図っていかなければなりません。そして、限られた財源である市民からお預かりした税金で行う市民のためのサービスをより厳選するとともに、かつての良い社会であった人と人との繋がりの強い互助社会の仕組みを再生し、地方自らが自立する自治体をつくり上げていかなければならないと考えております。

  私は、今日、この論点による『自立』への市政の方向性は、さらに正当性が増して来ているものと確信しております。

 

市政運営の計画

  次に総合計画の目標達成に向けての道すじについて申し上げます。

  私は、花巻市の初代市長として2年前に就任し、この2月で任期の折り返し地点に立ちました。与えられた任期4年間は、総合計画の目標とする将来像を達成するための基礎づくりの期間であると考えております。即ちこの4年間を『まちづくりの動きをリードし、まちづくりのための基盤を確立する期間』であると位置づけ、これまでその目標に向かって邁進してまいりました。

  任期1年目の平成18年度は、私のマニフェストを基に「強くて優しいまちづくり」、「市民参画・協働のまちづくり」を基本理念にした総合計画を策定し、新市の方向とまちづくりの目標を定めました。平成18年は正に、市制施行元年として歴史に刻まれる記念すべき年であり、この年度は新しい花巻市の準備の年であったものと思います。

  任期2年目の平成19年度は、総合計画に基づくまちづくりが始まるとともに、小さな市役所構想がスタートし、市民自らの地域づくり、正に地域主権の市政が始まりました。同時に職員の意識改革に着手し、総合案内の改革や若手職員との意見交換、本庁2階フロアのオープン化などに取り組みました。
  そして今議会にご提案をしておりますが、まちづくりをするときの「決まり」を定めた「まちづくり基本条例」、いわば花巻市の憲法ともいうべき最高規範の条例を制定したいと考えております。

  総合計画の「施策」とまちづくり基本条例の「決まり」によって、任期3年目の平成20年度からは、いよいよ本格的な市民参画・協働のまちづくりがスタートすることとなります。
  この協働によるまちづくりを進めていくためには、総合計画の目標とする将来像をより具現化した形で市民にお示しする必要があります。都市計画マスタープラン等により市全域のより明確な目標となる青写真を完成させたいと思います。
  最終的には4年間の任期内に、小さな市役所構想をさらに推し進め、地域づくりの核となるコミニティ会議が、自らの地域ビジョン・地域の青写真を描けるようさらに支援を強化し、総合計画の目標とする将来像を達成するための、まちづくりの基盤を確立して参りたいと考えております。

平成20年度の市政運営

  さて、平成20年度の市政を運営して行くに当たり、総合計画に定めた本市の将来都市像「早池峰の風薫る  安らぎと活力にみちた イーハトーブはなまき」と、その実現に向けたまちづくりの基本理念であります「強くて優しいまちづくり」、「市民参画・協働のまちづくり」を着実に推進しなければなりません。

  平成20年度は特にも職員の意識改革と産業振興、そして人づくりの3点に力点を置いて取り組んでまいりたいと考えております。

  私はこの2年間の市政運営において意識改革の必要性をますます強く感じてまいりました。と言いますのも、市職員との仕事を通じて、職員一人ひとりが自分の仕事の行き先を認識していないのではないかという疑問を感じたからであります。
  端的に言えば、平成12年の地方分権一括法の施行による機関委任事務の廃止の持つ意味を深く認識していないのではないか、つまり中央集権から地方分権に変わったことをです。
  中央集権時代は、まちづくりの目標は国がつくってきました。県・市は国に指示された事務事業を行いさえすれば、目標とした国やまちが出来上がっていったのです。つまり事務事業が県・市の目標だったのです。
  しかし地方分権時代に変わったことによって、国づくりの目標は国が、県づくりの目標は県が、市づくりの目標は市がつくる事となりました。「まちづくりは国がするもの」から「まちづくりは地方がするもの」、つまり目標は自分たちのまちづくりそのものとなったのであります。従って全ての事務事業は、目標とする将来像を達成するためのまちづくりに直結した仕事であるはずであります。
  このようなことをしっかりと認識せずには、職員一丸となってのまちづくりなど到底できるものではありません。
  そのため、全庁意識改革プログラムとそれを推進するための組織を立ち上げ、全庁的に意識改革に取組んでまいります。

  市民が花巻で生まれ、花巻で育ち、花巻で生きがいと意欲をもち充実した生活を営んでいくためには、産業の振興が極めて重要だと考えております。農林水産業、製造業、商工業、観光サービス業などのあらゆる産業が、それぞれ自立しそして融合的に振興が図られることにより市民所得は向上することとなります。そしてそれによって人口減少社会に直面している今、地域を守り活性化することにも繋がると考えております。
  複雑化、短期間に転換する国の農政に対応しつつ、花巻市独自の農業政策を立案し展開していくために、また企業誘致の強化と観光立市の確立を図るために、産業振興の専門性を高める必要があります。そのため産業部を農林水産部と商工観光部に分離独立し、産業振興を強力に推し進め、市民所得の向上に取り組んでまいります。

  人づくりの重要性はいまさら申し上げるまでもありませんが、人づくりはまちづくりそのものです。特にも学校教育は極めて重要な人づくりの要素でありますが、近年の学校教育の環境を見るにつけ、多種多様でかつ複雑な問題が数多く存在し、その対応に多くのエネルギーが奪われ、結果として教職員に大きな負荷が生じており、本来の学校教育に支障をきたしている状況となっております。
  未来を担う子供たちがより良い環境下で学校教育が受けられるようにするためには、現状の学校教育に関する多くの課題に教育委員会が専念できる体制が必要であると考えます。そのため、学校教育以外の仕事は市長部局が受け持ち、教育委員会は就学前教育も含めた学校教育に特化して、教育現場を強力にバックアップできる体制を構築して行きたいと考えております。 

 したがいまして、平成20年度は教育委員会と協議を重ね、その方向性を決定するとともに、花巻市の教育基盤の強化に取り組んでまいります。

平成20年度予算編成方針について

  以上、平成20年度の市政運営について申し上げましたが、予算編成に当たりましては、合併特例債や補助金など、合併による国の財政措置を最大限に生かしながらも、後年度を見据えた財政の健全性を確保する観点から、地方財政対策を踏まえた財源の安定的な確保と、歳出経費全般にわたる抑制に努めました。
  特にも、予算要求段階で厳しい目標をかかげ、総合計画の着実な推進を踏まえた上で、各部において事業の徹底したスクラップアンドビルドと、自治体経営を意識して事業を構築するよう意識改革を職員に求め、予算編成を行いました。

平成20年度の重点施策

  以下、これまで申し上げた以外の平成20年度の主要施策について、申し上げます。

(農業について)
  農業については、品目横断的経営安定対策から見直しされた水田経営所得安定対策への対応に万全を期すとともに、引き続き意欲ある農業経営者の育成に取り組んでまいります。

(工業について)
  工業については、岩手大学工学部附属の複合デバイス技術研究センター花巻サテライトのPRに力を入れるとともに、高度利用により産学共同研究や技術者の育成を推進してまいります。また、商工労政課内に新たに企業誘致推進室を設置し、関連企業の誘致を推進するためのプロジェクトを立ち上げ、国内の自動車関連産業や半導体関連産業などの工場立地の動向を的確に捉えて、積極的な企業訪問に取組むほか、既存立地企業へのきめの細かいフォローアップを図り、新たな事業拡大に向けた要請と支援に努めてまいります。

(商店街の再生について)
  商店街の再生については、パーキングアベニュー構想を具体化し、商店街に動きを起こしてまいります。

(観光について)
  観光については、7月に登録が予定されている平泉の「世界文化遺産」は、花巻市にとっても大きなチャンスと捉えており、岩手県や花巻観光協会と連携して平泉を訪れる観光客を当市に呼び込むため、県南地域を広域的に連携した「観光環状ルート」を設定するほか、平泉プロジェクトを立ち上げ、いわて花巻空港を利用した誘客など可能なあらゆる対応を講じてまいります。

(住環境づくりについて)
  住環境づくりについては、未給水地域への新たな試みとして、簡易浄水施設の実証試験を行ってまいります。

(医療について)
  医療については、医療制度改革による特定健診・特定保健指導の実施や後期高齢者医療制度事業への対応のため、国保医療課を保健福祉部に移管し、円滑な運営に努めてまいります。また、県立新統合病院の開院に伴い、かかりつけ医と総合病院との機能分担・連携による医療提供体制の構築を、県医療局や花巻市医師会等との連携を図りながら検討してまいります。

(子育て支援について)
  子育て支援については、妊婦健康診査の無料受診回数を増やすとともに、マタニティブルーや子ども虐待等の防止のため助産師による相談事業の充実を図るとともに、子どもに関する実質的な総合センターとなるよう、こどもセンターの機能充実を図ってまいります。また、延長保育や一時保育、病児・病後児保育など多様な保育ニーズに対応できる特別保育サービスの一層の充実を図るとともに、公立保育所の再編について取り組んでまいります。

(教育環境づくりについて)
  教育環境づくりについては、適正規模で活力ある学校環境の創出のため、教育委員会と連携して引き続き学区再編に取り組むとともに、児童・生徒一人ひとりの基礎的・基本的な学力の向上や職業観・勤労意欲の育成、国際的視野を広げる国際理解教育・心の教育の充実を図ってまいります。

(スポーツ振興について)
  スポーツ振興については、田瀬湖が北京オリンピックの日本とギリシャボートチームの合宿地に決定したことから、その対応に万全を期してまいるとともに、ボート競技場「田瀬湖」を全国にアピールしてまいります。また、引き続きフットサルチーム「ステラミーゴいわて花巻」を支援し、身近にハイレベルのスポーツにふれあう機会を提供して、競技スポーツのレベルアップに努めてまいります。

(芸術文化について)
  芸術文化については、埋蔵文化財管理の拠点施設として、(仮称)総合文化財センターの建設に向け設計作業に着手してまいります。

(国際交流について)
  国際交流については、5月に友好都市提携記念チャーター便「花巻市民のつばさ」を運航し、大連市西崗区との市民交流を行うとともに、今後の交流について協議を進めてまいります。

(市民の歌について)
  昨年、制定した市民の歌については、6月に服部克久さんをお迎えして「花巻市民の歌」の制定記念事業を開催し、市民の歌のPRと市民の一体感の醸成を図ってまいります。

(防災体制と減災対策について)
  防災体制と減災対策については、5月に当市で開催される東北最大の北上川上流水防演習に積極的に参加していくほか、自主防災組織の重要性の啓発と育成に努めてまいります。

(快適な窓口体制について)
  快適な窓口体制については、市民サービスの基本である窓口業務の重要性から、10月を目標に全ての庁舎でワンストップサービスのための総合窓口制の導入を図ることとし、そのため総合支所においては窓口業務関係担当を市民サービス課として一括管理し、そのほかの担当を地域振興課として管理する2課体制で運営することといたします。

(権限移譲について)
  権限移譲については、基礎的自治体の確立とより地域に密着した質の高いサービスを提供していくため、岩手県が行ってきた行政サービスのうち、市民に身近なものについては積極的に県から譲り受けることとし、大幅な権限移譲を行ってまいります。

むすびに

  昨年、私は、市内のあちらこちらで新しい動きが生まれる、そしてそれによって活気が生まれる、という意味で「新動」という二文字をキーワードに職員とともに、まちづくりに邁進してまいりました。今年はその新たな動きを一つひとつ確実な動きにしていく年だと思っております。自立した市民と自立した行政との協働による「岩手ナンバーワン」のまちづくりを進めるため、任期後半、私は最大限の努力を傾注してまいります。

  市議会並びに市民の皆様の、一層のご理解とご協力を心からお願い申し上げ、私の所信表明といたします。
       花巻市長  大石 満雄