河童の証文

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ページ番号1008423  更新日 平成31年2月21日

河童の証文(口碑伝記:第一集)

亀ケ森の中央部を流れる稗貫川に桜淵という深い淵がある。その淵の南岸には境田という屋号の山崎家がある。昔、この山崎家で馬数匹を川端の草地に放し、.厩の肥え出しに近所の人々の手伝いを受け、昼食中のことであった。放してあった馬が鼻を吹き、ものに驚いた様子で先を争って厩に駆け込んできた。厩に入ってもあばれ、駆け回るので、家人は馬を押えたが、それでも驚いている。不思議に思って押えていると、かいぼ桶が伏せられたまま時々ガクガクと動くのであった。なお不思議に思って桶を取ってみると、何と子どもの格好をした河童が両手を合わせて、
「助けてくれ」
とでもいうように、何回もお願いする様子であった。
どうやら馬が川端で草を食っているときに、この河童は川から出てきて馬を川の中に引き入れようとしたのだが、河童は陸の上では力が弱いので、手綱をにぎったままひきづられ、ついに厩まで来てしまったらしいのだ。
それで、家人や手伝いの人が怒って、
「この河童やろう」
と打ちたたいて責めた。そのとき河童もようやく口を開いて、
「どうか許してくれ、悪かった」
と平謝りして、なお続けて言った。
一、今後どんな洪水があっても、境田家には浸水させないこと
一、横枕橋から下流、境田家の以東で溺れ死ぬ者のないようにすること
一、この約束の証として、手形一枚を置くこと
「これを約束するから、命だけは助けてくれ」
と何度も手をついてお願いするのであった。それならば手形とはどんなことをするのかと、紙と筆を出してみると、河童は筆をとって、手の甲に真黒く墨を塗り、白い紙の上に手印を押した。
「こんなものが証文にたるものか」
と言うと、
「これは河童証文というもので、決してウソではないから助けてくれ」
と嘆願した。
「では命だけは助けてやるから、これからは決してこんな悪いことはしないようにな。また、証文どおりに約束を守ることを固く誓えよ」
と主人が言うと、河童は喜んで桜淵の方に行ってしまった。
その後は、たびたびの大洪水があっても境田の家は決して浸水することはなく、対岸の方に被害があっても境田の家の方にはなかった。
この河童証文というのは、白紙にただ手の形が押してあるもので、文字はなかったという。
いつのときか、毎度水害に悩む家が証文を貸してくれといって持って行ったが、それは境田家だけの証文であったため、借りた家は大洪水の際に流されてしまい、証文も流れてしまって今はないということである。

また、後日談として、この洪水で流された証文は、稗貫川を流れ下って北上川までたどり着き、北上のある寺の住職に拾われて寺宝となっているという。

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