【令和5年12月14日掲載】「読書おもいで帳システム」、ミストノズル搭載機「エアリーライフ」(株式会社新興製作所)

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ページ番号1020408  更新日 令和5年12月14日

「読書おもいで帳システム」をご存知ですか?

読書おもいで帳システム

花巻市内の公共図書館(花巻、大迫、石鳥谷、東和)などに設置されている「読書おもいで帳システム」を見たことはありますか?

「読書おもいで帳システム」とは、図書館で借りた本を通帳型の手帳へ記帳し、読書のおもいでづくりをサポートしてくれるシステムで、全国約260か所の公共図書館や小中学校の図書館に導入されています。(令和5年11月取材時点)

今回は、この機械を開発した花巻のモノ・コトづくり企業「株式会社新興製作所」についてご紹介します。

「株式会社新興製作所」ってどんな会社なの?

株式会社新興製作所は、花巻市大畑に本社を置く創業1937年(昭和12年)と長い歴史があるモノ・コトづくり企業で、国内初の和欧文併用頁式印刷電信機や新聞用漢字テレプリンタの開発によって、情報通信端末分野で事業基盤を確立してきた歴史があります。

現在は、通帳記帳機やパーキング・チケット等の「メカトロニクス機器事業分野」、遊技場向け自動化設備機器等の「アミューズメント事業分野」、在宅医療用酸素濃縮装置やペット用酸素ハウス等の「医療・介護機器事業分野」といった製品開発と製造を中心として事業展開をしています。

中でも、メカトロニクス機器分野の『運ぶ』『揃える』『数える』『めくる』『折る』『印刷する』といった紙媒体のハンドリング技術を得意としており、冒頭で紹介した「読書おもいで帳システム」にも、これまで培ってきたハンドリング技術が活かされています。
通帳記帳機にいたっては、現在世界でも数社しか製造しておらず、数少ない開発製造元として国内のみならず海外へも輸出しています。

近年では、新たなハンドリング技術『噴霧する』にも挑戦し、ミストノズルの開発と共にフレグランス事業にも参入を果たしました。
本記事では、同社のミストノズル開発への挑戦について深堀していきます。

工場内で組み立てられ、出荷を待つ読書おもいで帳システム
工場内で組み立てられ、出荷を待つ読書おもいで帳システム。
『めくる』『印刷する』といった同社のハンドリング技術が詰め込まれています。
花巻市の公認キャラクター「フラワーロールちゃん」が印字された海外輸出用梱包ケース
花巻市の公認キャラクター「フラワーロールちゃん」が印字された海外輸出用梱包ケース。
メイドイン花巻の製品が全国、海外へ向けて出荷されています。

ミストノズル開発への挑戦

「始まりは2015年頃、衛生環境づくりの大手企業から、トイレなどに設置する芳香・消臭器用のミストノズルの開発を依頼されたのが始まりでした。」と語るのは事業統括執行役員の青木俊幸さん。噴霧(ミスト)に加えて、液体のハンドリングも初めての挑戦でしたが、ハンドリング技術に実績のある同社への大手企業からの期待もあり、開発をスタートしました。

自社内での研究、試行錯誤を重ね、2018年には試作品が完成。量産を目前にしたところでしたが、2019年にお客様(大手企業)の都合で製品化の企画が中止となり、事業化を一時断念することとなります。

事業化の話は無くなったものの、「試作まで出来たのだから実用レベルまで開発をやり切ろう」と決意し、自社オリジナルのミストノズル開発を継続。開発を続け、より安定した噴霧が可能な試作機が出来上がりますが、完成を間近にしたところで一つの課題に直面します。

それは、素材を機械で削って部品を作成する「切削加工(せっさくかこう)」では、試作品の精度に限界があるという課題でした。
精度の向上や性能測定の官能検査、量産化などに向けては、型の作成により量産を行う「金型製作(かながたせいさく)」による開発が必須でしたが、金型製作は切削加工と比べて費用がかかることや、確実な事業化が約束されているものではなかったことから、金型製作に切り替えての開発継続は同社にとってリスクを抱える状況でした。

しかしそこへ開発を後押しする出来事が起こります。当初開発依頼のあった大手企業より、再び同社へミストノズル製造委託の話が舞い込んできたのです。ミストノズル製造委託の再燃によって事業化が現実味を帯びてきたことも追い風となり、同社では2021年から花巻市の成長分野進出事業補助金※も一部活用しつつ、金型製作による積極的な自社開発を続けました。その結果、開発したノズルが官能検査で高い評価を得られ、2023年に大手企業と正式に取引を開始したことをきっかけにフレグランス事業への参入を果たしました。

青木さんからは「ミストノズルの開発は、切削加工の段階からある程度手応えを感じていたので、金型製作に踏み切ることで試作開発から製品化まで一気に進められたことがポイントでした。加えて、最終的には受託開発ではなく自社での研究開発としたことによって、自社製品として世に出せた点も大きな成果でした。」とお話しいただき、新たな分野、業界にも関わらず、積極的な挑戦を続けた同社の決意や、これまでの研究開発・技術の積み重ねが、自社製ミストノズルの完成と業界への参入を果たす結果に繋がったことが伺えました。

※成長分野進出事業補助金とは、市内企業の新規参入や新たな事業展開を促進するため、成長分野における新製品・新技術開発及び販路開拓に係る経費の一部を助成する制度です。

執行役員 青木俊幸さん
執行役員の青木俊幸さん。
読書おもいで帳システムの紹介から、ミストノズルの開発経緯まで丁寧にお話しいただきました。
自社開発のミストノズル搭載機「エアリーライフ」
自社開発のミストノズル搭載機「エアリーライフ」。
部屋の壁などに設置して、上部の噴射口から消臭や芳香用に粒子の細かいミストを噴霧します。

自社開発したミストノズルの特徴、製品「エアリーライフ」について

開発されたミストノズルの特徴としては、従来品のミストノズルと比べて排出されるミストの粒子が細かいおかげで、より広範囲かつ長時間に渡って香りが空間に留まる点で、専門機関による粒子試験においても従来品と比較した場合の優位性が認められています。

ミストノズル開発プロジェクトの中心となった製品開発課の木村智彦さんへ、開発にあたって苦労した点を伺ったところ、「ノズルの先端部や形状、部品間の距離や角度によってミストの出方や細かさが全く変わってくるため、色々なパターンを試しましたし、実用化のためには、香料以外にも消毒液などの液体にも対応する必要があるため、複数種類の液体で何度も試験を行いました。」とお話しいただき、小さなノズルの形状から内部構造まで全てに同社の研究成果と技術が詰まっていることが伺えました。

製品は、予め前面カバーが付いた状態の製品「エアリーライフ」としての提供が可能なほか、前面カバーのデザイン部分を受託製造とすることもできるため、設置する施設の雰囲気や特性に合わせることも可能となっています。今後、このミストノズルを搭載した芳香・消臭器が各地の商業施設やオフィスのトイレ、ロッカールームなどで稼働する予定です。

製品開発課 木村智彦さん
製品開発課の木村智彦さん(写真左)。
試作を重ね、徐々に製品が完成に近づいていくモノ・コトづくりの楽しさが伝わってきました。

最後に

最後に、今回紹介した「読書おもいで帳」と「ミストノズル(エアリーライフ)」の今後の展望について、事業統括執行役員の青木さんへ伺ったところ、「読書おもいで帳は、国内の約3万校の小中学校及び公共図書館へ普及をすすめていくことで、魅力的な図書館づくりや子ども達の思い出づくりをサポートしていけたらと思います。また、自社開発したミストノズルは、新たな自社製品としてさらなる販路開拓を考えています。」と意気込みをお話しいただきました。

今回は、創業86年目(2023年現在)を迎える花巻の老舗モノ・コトづくり企業「株式会社新興製作所」をご紹介いたしました。
同社の提供する製品はニッチな分野ながらも公共空間や生活空間に馴染みのある製品も多く、長いモノ・コトづくりの歴史の中で培ってこられた技術が、現在の製品にも活きていると感じました。
そして、近年では液体ハンドリング技術といった、新たな分野、技術への研究にも取り組まれており、同社が得意とするハンドリング技術に『噴霧する』が新たに加わり、その技術が高く評価される日も近いかもしれません。

ハンドリング技術のパイオニアとして、新たな技術開発に挑戦し続ける同社の歴史はこれからも続きます。

製品ショールーム
同社の社内にある製品ショールーム。
長い歴史の中で生み出されてきた数々の製品が並びます。
本社外観
本社外観。

企業情報

株式会社新興製作所

住所:岩手県花巻市大畑第9地割92番地6

電話番号:0198-26-4311(代表)

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