【令和3年11月5日掲載】義肢・装具・車いす製作(株式会社P.O.イノベーション)

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ページ番号1015248  更新日 令和3年11月5日

義肢・装具・車いす製作

「東京2020パラリンピック」で花巻の企業の社員が大会をサポート?

日本のみならず世界中に感動と勇気を届けた「東京2020オリンピック・パラリンピック」。約1か月間にわたって各競技で熱戦が繰り広げられ、その様子に釘付けになった方も多いかと思います。

世界中から多くのアスリートが参加した「東京2020パラリンピック」において、義肢装具のメンテナンス等で大会を支えるために、花巻市内の企業から1人の技術者が派遣されていました。豊富な症例数と持ち前の高い技術力が認められ、世界的な大会に技術者を派遣したのが、「株式会社P.O.イノベーション」です。

「P.O.イノベーション」ってどんな会社なの?

P.O.イノベーションの歴史は、戦後間もない昭和20年(1945年)に花巻市上根子の自宅にて、平賀又右エ門氏が創業したことまでさかのぼります。創業者である平賀又右エ門氏は大腿切断者であり、自らの経験した不自由と苦悩をもとに、「もっと良い義足を作りたい」という想いを抱き、義肢製作業をスタートさせました。使う人が快適に動けるための工夫が随所に施された義足は、「又右エ門の義足」呼ばれ、使用者の方々に広く愛されるようになります。

2代目の平賀邦三氏は、17歳から創業者である平賀又右エ門氏の指導のもと義足づくりを始め、昭和45年(1970年)に父の代わりに代表となったのち、昭和61年(1986年)に有限会社平賀義肢製作所として法人化しました。

約50年のキャリアを通して、常に最新の技術や知識を積極的に取り入れ、義肢装具の近代的な製作技術を確立しました。義足の先進技術であった「骨格構造義足」の技術も岩手県で最初に導入し、昭和57年(1982年)に岩手県で第一号となる骨格義足認定工場の指定を取得するなど、常に最先端の技術を取り入れることで、お客様に密着した義肢装具づくりを展開していきます。

3代目となる見木太郎氏は、平成26年(2014年)に代表に就任し、社名を「株式会社P.O.イノベーション」に変更しました。これは、平成27年(2015年)に創業70周年を迎える「有限会社平賀義肢製作所」が、創業者・平賀又右エ門氏、2代目・平賀邦三氏が大切にしてきた「変化を恐れないDNA」を継承し、創業以来の精神「勇気をもって変わり続けること」を胸に、社員一丸となって岩手県の医療・福祉サービスのさらなる向上に貢献するという決意の表れでした。

現在は、「コロナ禍で入院先への訪問が制限される中、装具をお使いになる患者様の入院中のリハビリの様子を可視化して、患者様やそのご家族を安心させたい」との想いから、国の補助金を活用して新たな事業展開を検討している最中のようです。

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3代目の見木太郎代表

「義肢」、「装具」って何?

さて、ここまで「義肢」や「装具」という、普段の生活ではなかなか耳なじみのない言葉を使ってきましたが、「義肢」・「装具」とは一体どんなものか想像するのが難しいと思います。

「義肢」には、「義手」と「義足」があります。病気や事故などで、手や足の一部を切断により欠損した場合に、その手や足の形態や機能を復元するために装着、使用する人工の手足のことです。

「装具」は、ケガや病気によってからだの一部が機能低下したり、失われたときに補助するために使用したり、からだの変形予防や矯正を目的としたりするものとなります。大きく分けると、肩から指先までの各部位に装着する「上肢装具」、股関節から足先までに装着する「下肢装具」、首から腰までに装着する「体幹装具」、その他に「靴型装具」があります。これらは機能性や使いやすさを追い求めるのはもちろんのこと、体重負荷による痛みが出ないようにすること、身体の状況に応じて微調整したり素材を変えたりと、様々な工夫が施されます。

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下肢装具の製作現場

「義肢」や「装具」は様々な部品で構成されていて、その大半がオーダーメイドで製作されます。その理由は人によって日々の暮らしや社会生活のスタイルが異なるほか、けがや病気による戸惑いや悩み、要望も千差万別であることから、義肢装具や車いすを使う方は1人として同じ状態・状況の方がいないためです。

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P.O.イノベーションで導入しているドイツ製のインフラレッドオーブンは従来式に比べてプラスチックに熱が均等に伝わるため、安定した製品づくりには欠かせません
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義足の仮合わせ用ソケットに使うプラスチック

P.O.イノベーションの信頼される義肢装具製作

足の形に合わない靴を一日履いていると、痛みや不快感でその一日がゆううつになってしまうという経験が誰でもあるように、365日、24時間、身体の一部となる義肢装具は、実際に使用されるお客様の生の声こそが次の技術やサービスにつながっていきます。P.O.イノベーションでは、単に製品という「もの」をお渡しするのではなく、お客様が製品を使用されている「時間」も同時に担当させて頂いていると考えて、「少しでも快適な義肢装具にしたい」、「医師やリハビリテーションスタッフの治療の助けとして役に立ちたい」という想いで、お客様に合わせた義肢装具を作っています。

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お客様に合った義肢装具となるよう、担当スタッフが非常に細かく調整していきます

P.O.イノベーションでは医師の指導のもと、専門知識を備えたスタッフがお客様の状況に合わせながら時間をかけてお話しして、要望や生活スタイルにあった「義肢」を提案しています。スタッフは担当制をとっており、お客様の採型(型どり)、仮合わせ・調整、そして完成・アフターフォローまで一貫してきめ細やかなサポートをしているほか、女性スタッフも在籍しているので、女性のお客様でも気軽に相談できるのが特徴です。

東京2020パラリンピックでのP.O.イノベーションの活躍

東京2020パラリンピックでは、世界各国から選ばれた約100人の技術者が義足や車いすなどの修理・メンテナンスを無償で行うなどして大会を支えました。障がいがあるアスリートの義足などの調整はミリ単位の精度が求められるなど、非常に繊細な作業が多いといいます。

選手村の修理サービスセンターや競技場の修理ブースは、ドイツの医療福祉機器メーカー「オットーボック」が1988年ソウル大会から運営していますが、今大会では日本国内から14人の技術者が修理に参加しました。その中の1人に選ばれたのが、普段はP.O.イノベーションで腕を磨いてきた義肢装具士の中嶋政勝さんです。中嶋さんは義足、装具、車いすなど全ての修理ができる高い技術力が評価され、東京2020パラリンピックに技術者として従事することとなりました。なお、東北地方からは仙台からの1社を含め2社2名のみが大会に従事されたということですので、P.O.イノベーションは東北のみならず、日本全国で見ても有数の技術力を持った企業ということになります。

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東京2020パラリンピックに派遣された中嶋政勝さん

宮古市出身の中嶋さんが福祉の道を志すようになったのは、中学時代に野球で腰を痛めてコルセットの型作りを依頼したことがきっかけだったそうです。高校時代にはケガの影響で野球から離れましたが、ヨット部の一員として全国的な大会にも出場されるなど、部活動に一生懸命取り組まれました。高校3年生になって進路を考えて際に、コルセットの型作りを担当してくれた義肢装具士が笑顔で接してくれたことを思い出し、「モノづくりを通して自分も人の役に立ちたい」と故郷の宮古市を離れて、新潟県新潟市の新潟医療福祉大学へ進学し、義肢装具士の国家資格を取得しました。その後、大学卒業前にとある学会でP.O.イノベーションの見木代表に出会ったことをきっかけに、東日本大震災で被災した地元のために働きたいと一念発起し、岩手県にUターンしてP.O.イノベーションに入社しました。入社後は、平成28年(2016年)に岩手県で開催された全国障がい者スポーツ大会(希望郷いわて大会)でも競技用車いすや義足の修理に従事するなど、経験を積んでいきます。

義足作りやメンテナンスは、使う人とコミュニケーションを取りながら、違和感がなくなるまで作業が行われます。パラリンピック競技では、メダルや自己ベストを目指す選手が納得できるよう、非常に細かな部分まで調整が必要になるといいます。
「試合まで時間が限られている中での作業が必要であるのに、見たことがない部品もあるといった特殊な環境。コミュニケーションをとるのにも一苦労するだろうけど、大変な思いをして、経験を積んでほしい。中堅の中嶋を派遣するのは会社としてもチャレンジでしたが、経験をユーザー様や若い社員に還元してほしい」と、見木代表は中嶋さんに全幅の信頼を置いて、大会への派遣を決めました。

大会期間中は競技で酷使された車いすのシートの縫い直しや各パーツの調整、タイヤ交換のほか競技用のみならず生活用の器具の調整など、修理依頼は多岐にわたったほか、ひっきりなしに選手が訪れたそうです。また、見木代表が心配していた通り、最も大変だったという外国語でのコミュニケーションや見慣れない器具・車体の修理、錆びたネジの処理などこれまでに経験したことのないようなサポートが必要だったほか、コロナ禍での大会ということで、毎日の健康チェックやPCR検査、消毒の徹底など業務以外のところでも様々な苦労があったそうです。そのような大変な状況でも、外国人スタッフがアグレッシブに活動されている様子を目の当たりにしたこと、パートナーとして業務にあたったブラジルの義肢装具士が修理・調整した選手がメダルを獲得できたこと、ボッチャ会場での従事では日本チームの奮闘を陰ながら応援することができたことなど、大会期間中の苦労を中嶋さんは楽しそうに振り返ります。

見木代表が大会へ送り出した想いを中島さんはくみ取り、「派遣が決まった当初は選ばれた喜びと、自分の技術で大丈夫なのかという不安が入り混じっていましたが、東京2020パラリンピックでは修理スキルやコミュニケーション能力を高めることができました。今後は障がい者スポーツへの関わりをさらに増やして、競技人口の増加に貢献していきたいですし、大会で学んだことを胸に技術を磨くことでもっと高いレベルにたどり着いて、岩手のユーザーの皆さんにも還元していきたいです。いずれはパラリンピックでメダルを目指すアスリートの支援をしていきたい」と力強く語ります。

見木代表も「中嶋は大会から帰ってきてからは顔つきも変わって、非常に成長したと思います。会社からパラリンピックに派遣されるような社員が出たのは嬉しいことですので、今後の大会にも会社から継続して派遣できるように、様々な経験を下の世代に伝えてほしい」と、中嶋さんの今後の活躍に期待を寄せます。

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若手・女性スタッフが多数活躍する職場です

経験は若手社員に

P.O.イノベーションは若手社員が多く、職場に活気があるのも特徴です。取材のために訪問させていただいた際は、社員の皆さんから元気の良いあいさつをいただきました。

義肢装具士でありながら、広報も担当されている藤田真帆さんは、北海道北部のオホーツク管内最大の都市である北見市のご出身です。中嶋さんと同じように高校3年生の時に進路を考えていた際、ブラジルパラリンピックが開催されていたのをテレビで見て、「常に発展していっている医療系の分野で、モノづくりにも携わることができる義肢装具士の仕事に興味を持ちました。また、人と話すことが大好きなので、コミュニケーションをとりながら仕事ができるのが魅力的でした」と、義肢装具士を志したきっかけを教えてくださいました。

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北海道北見市から遠く離れた岩手県花巻市のP.O.イノベーションに就職を決めたきっかけは、義肢装具士を志して進学した専門学校の先輩の就職が多かったからだそうです。義肢装具士の資格を取得できる学校は全国的にも少なく、東北地方には一校もないことから、資格を持っている方を採用するためには、新潟県や北海道の学校を訪問しなければならないそうです。そのためか、P.O.イノベーションに所属する義肢装具士の約半数が北海道出身の方であり、「この会社なら地元の人が多いから楽しく仕事ができるかも」と思い、藤田さんはP.O.イノベーションへの就職を決意しました。

「花巻は気候が穏やかで住みやすいですし、優しい人が多いと思いました。また、義肢装具士としても毎日驚くようなことがあって、仕事にやりがいがあります」と語る藤田さん。最近は見木代表から特命で「広報担当」に任命され、普段の義肢装具製作のかたわら、P.O.イノベーションのインスタグラムページの立ち上げや企業紹介等の動画製作に大忙しとのこと。
※インスタグラムページが立ち上がりましたら、本ページでも紹介させていただきます。

藤田さんに将来の夢を伺ったところ「義肢装具士を志したきっかけがパラリンピックだったので、中嶋さんのようにパラリンピックに派遣されるような義肢装具士になりたい」と、見木代表や中嶋さんの想いは若手社員の皆さんにも届いているようでした。

最後に

「東京2020パラリンピック」を経て、障がい者スポーツはこれまで以上に認知度を高め、障がいのある人のポテンシャル、高度な技能を多くの人が幅広く知る良い機会となりました。東京2020パラリンピックの開会式・閉会式で表現された「共生社会」、「多様性」の実現のため、P.O.イノベーションはお客様のニーズに合わせた義肢装具をこれからも丁寧に作り続けます。

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オーダーメイドで製作される義肢装具 これまでも、これからも、手作業で丁寧に仕上げていきます

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